研究課題/領域番号 |
19206057
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
味埜 俊 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (60166098)
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研究分担者 |
佐藤 弘泰 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (90251347)
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キーワード | 生物学的りん除去 / 亜硝酸型硝化脱窒 / モデル化 / 分子生物学 / 排水処理 |
研究概要 |
生物学的リン除去活性汚泥プロセスについては、常時3基を運転する体制を確立した。そのように多くの装置を平行して運転する理由は、植種後、一時的にリン除去が活発に行われる状況になるものの、運転開始後1~2ヶ月にてほぼ必ずリン除去が不安定になり、同時に糸状性細菌が卓越することが繰り返し見られることによる。そのような状況を確認するために、初年度に開発したプログラムをさらに改良し、pH、DOに加え、酸素摂取速度の変化を追跡できるようにし、また、電気伝導度も連続監視項目に加えた。 また、活性汚泥中の微生物群集構造の変化を迅速に捉えるための技術として、超音波破砕・希釈法によるDNA抽出に加えて、マトリックス支援脱離イオン化・飛行時間型質量分析法(MALDI/TOFMS法)を用いる方法について検討した。16SrRNAにハイブリダイズさせた遺伝子プローブを回収し、その組成を分析する手法、および、活性汚泥試料から有機溶剤等によって抽出される成分を直接分析し、その質量スペクトルをいわば指紋として用いて比較する方法の二つを検討した。後者は分析対象の成分が特定できないという欠点はあるものの、汚泥の相違を迅速に比較しうる方法であるとの結果が得られつつある。細菌群集構造の変動を容易に検出することを可能にする技術であり、群集構造の変化を引き起こす要因を明らかにするために非常に有力な技術となる事が期待できる。 また、活性汚泥中の一部の微生物が一時的に有機物を貯蔵する能力を活用し、下水処理に要する曝気動力を削減し、かつ、下水中の有機物をバイオマスとして固定し回収する方法を考案した。本法の効能を試算したところ、酸素供給量を1割程度削減でき、また、バイオマス回収量を最大2割程度増加させうるとの結果が得られた。本法は、活性汚泥プロセスのエネルギー消費の改善に大いに有効であると期待される。
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