研究課題
平成22年度では制振構造の設計と解析に関する様々な研究成果をあげることができた。概略を述べる。(1)非線形架構をもつ制振構造の設計:架構の塑性化・非線形化避けられない制振構造もあり、地震時にそれらの特定の層への変形集中を防ぐ設計法を構築した。ダンパーは線形型(粘弾性ダンパー)で、架構が弾塑性バイリニア型(例えば通常の鋼構造)、弾塑性スリップ型(例えば軽量鉄骨構造や木質構造)の場合などを対象とした。(2)非線形ダンパーをもつ制振構造の設計:研究代表者は、リリーフバルブにより力が速度にバイリニア的に比例するオイルダンパーや、高粘性のビンガム流体の使用により力が速度の0.1~0.5乗に比例する粘性ダンパー、そして線形粘弾性体と摩擦体の直列結合からなる粘弾塑性ダンパーを用いた設計法を過去にそれぞれ提案した。22年度は、新たに、小振幅では楕円、大振幅でバイリニアの履歴を示す非線形粘弾性ダンパーを対象として設計法を構築した。(3)架構の非線形性を精確に再現する時刻歴解析法:木質架構は、その材料の柔らかさと釘やビスなどの局所の抵抗力に依存した接合法を用いるため、その履歴特性は非線形である。この地震における時刻歴挙動を精確に再現することは難しいが、合板の釘の抜けや滑り、接合金物の局所的な曲げ降伏や滑り、木材の局所的な潰れなどによる非線形挙動を精度良く再現して、震動台実験結果と良く合うような木質制振架構の解析法を提案した。(4)地震による複雑な3次元挙動の検討:建物平面上の剛性中心が質量中心から偏った場合、建物には地震時に振れ応答が伴うが、その把握を可能にする動的応答予測法、そしてダンパーを付加して振れ応答を抑える方法も開発した。また、世界で始めて地震時の鋼構造の倒壊を実験的に再現し、その現象の細かい分析を行った。
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日本建築学会構造系論文集
巻: 661 ページ: 609-618
巻: 650 ページ: 781-790
巻: 652 ページ: 1089-1098
巻: 655 ページ: 1625-1634
巻: 655 ページ: 1691-1700