研究概要 |
耐震工学における性能設計の確立をめざす研究において,大型構造実験への要求はますます高まっているが,初期投資・運営経費等においてそれを実現できる施設は極めて限られている.これら問題への有効な処方箋として「分散型ハイブリッド構造実験法」と称する新しい耐震構造実験手法を,オンライン応答実験法を基盤とし,複数の実験と複数の汎用有限要素法解析コードを併用することを射程として,開発する. 本研究は,2フェーズ(フェーズ1:分散型ハイブリッド構造実験システムの構築と試運転,フェーズ2:分散型ハイブリッド構造実験システムを用いた地震応答再現試験),9課題(1-A〜1-B,2-a〜2-d)からなる課題を設定する. H19年度では,フェーズ1の,1-A:複数実験施設間データ交換システムの整備;1-B:サブストラクチャ解析部への汎用解析コード適用手法の開発;1-C:各部分秘匿性保持を確保できる運動方程式解法の考案;1-E:ハイブリッド構造実験システムの動作確認試運転と,フェーズ2の,2-a:鋼構造ラーメンの完全崩壊挙動の再現に取り組む.1-Aでは,IPアドレスとポート番号を組み合わせるシステムを整備し,データ通信に関する共通の土俵を構築した.1-Bでは,多数の汎用解析コードを併用する仕組みを考え,多くの解析コードが有しているリスタート機能を繰り返し用いて,変位他の適合を満足しうる手順を構築した.1-Cでは,解析各部に対して設定した運動方程式の等価静的釣合系への置換,境界自由度と内部自由度への分割,縮約作業を経た境界自由度に対する剛性行列の作成,境界変位・荷重情報の交換のみによる全体系の適合と釣合確保,という手順を提案した.1-E,2-aでは,4層1スパンの鋼構造ラーメンを考え,損傷が大きい柱脚部を実験部,その他を有限要素法解析に頼る実験を実施し,(1-A),(1-B), (1-C)の適用性を検証した.
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