研究概要 |
平成20年度は、「リバースCFD」と「応答係数法」のそれぞれの手法に関してシミュレーション用のプログラムを開発した。リバースCFDは、通常の3次元非定常の拡散数値シミュレーションに関して、移流項と拡散項のそれぞれの符号をマイナスとすれば、直ちに時間逆転シミュレーションが可能となる。これに関しては既存のソフトを使用する。しかし、負の拡散による数値的不安定を防止するため、拡散スケールの解析と数値計算格子スケールなど小さいスケールの拡散をダンプさせるフィルターの作成と組み込みが必要となる。 負の拡散は、汚染質が低濃度領域から高濃度領域に輸送される現象である。過度の輸送は負値を招き、高濃度域では時間とともに濃度勾配が増大する。この負拡散が時間逆転進行に伴い物理的に非現実とならないようシミュレーションに制限をかける方法として,濃度が負になる領域が発生した場合,その負値をゼロキャンセルする計算アルゴリズムを組み込むことで,計算の安定性を確保した。 応答係数法による非定常濃度場解析シミュレーションプログラムは既存のものがないため,新たに開発した。ここでは,CFDにより定常気流分布を計算し,その流れ場のCFDによる濃度計算により,汚染質発生点から観測点への応答係数を算定し,応答係数法に基づき観測点の濃度の畳み込み計算式を立てる。この濃度の計算式に重み付残差法を適用して,観測濃度と計算濃度の残差を最小にする汚染質発生量に関する連立方程式を定式化することで,観測濃度に最も適合する汚染源の位置や強度などの汚染源情報を解析的に求める。この連立方程式による発生量計算は畳み込み計算による濃度解析に対する逆解析である。
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