研究概要 |
本研究では価電子帯構造制御という概念で探索した金属間化合物をもって、新たな触媒材料を創製し、触媒機能、電子構造および表面状態との相関を結び付け、触媒設計の基礎を構築する。また、触媒活性や触媒機能にもたらす合金化の効果を、「合金設計」の学問を基盤に「金属学と触媒化学の融合」という新たな学術領域の開拓は本研究のもう一つの目的である。平成19年度で得た成果を以下にまとめた。 1.Spring-8にてPdZnおよびCuの構造解析を行い、この結果に基づき(100)および(111)面における電子密度分布を求めた。現在その解析を行っている。 2.Pd, PdZnおよびCuの担持系触媒を作製し、各合金表面におけるCOおよび水素分子の吸着を測定した結果、PdではCOおよび水素分子に対していずれも吸着するが、合金化したPdZnはCuと同様にいずれの分子に対しても吸着性を失った。この結果は計算したバルクの電子構造および触媒選択率の結果によく対応している。 3.PdZn, NiZnそしてPtZnの三つの合金の表面価電子帯構造のスラブ計算を行った。(001)面が表面に現れる時、最表面にTM(TM:Pd, NI, Pt)原子だけとZn原子だけが現れるケースがある。バルクの価電子帯構造に比べてdバンドは前者では低エネルギー側へ、後者では高エネルギー側へ偏っている。一方、(111)面が表面に現れる場合、いずれの合金においてもTMとZnとの原子が半分ずつ最表面に現れ、これらの表面の価電子構造はいずれもバルクと同様なものになっている。表面エネルギーを考慮した場合、金属間化合物では表面とバルクの電子状態が類似していることが分かった。
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