研究概要 |
廃熱を電気エネルギーとして回収できる熱電発電に用いる高温用熱電材料として、本研究ではハーフホイスラー型化合物に注目している。中でもTiNiSnベース合金は、有害・希少元素を使わずに材料設計ができるため環境エネルギー材料として魅力的である。しかし、Snの融点が他の構成元素に比べて極端に低いことから、従来法である溶解凝固法や粉末冶金法による単結晶や単相合金の作製は困難である。我々は光学式浮遊帯域溶融法を用いる一方向凝固によってZrNiSnやHfNiSnの単相合金の作製に成功している一方で、TiNiSnに対しては未だ条件が最適化できない。そこで、状態図の作成に着手し、TiNiSn相が三元包晶反応で生成すること、Sn液相と直接平衡して生成する反応経路があることを見いだした。さらに、粉末冶金法をベースとする新たな作製プロセスを提案した。Sn(融点=232℃)粉末を利用すると非平衡凝固過程を経由する液相焼結が回避できないので、Snの代わりにSnO_2(融Ti-Ni-Sn三元系の場合にはTiが酸化することが課題となった。そこで、Ni-Sn二元系のNi_3Sn,Ni_3Sn_2,Ni_3Sn_4を対象に予備実験を行ったところ、全ての化合物をSnO_2粉末の還元反応による粉末冶金法で作製することに成功した。Sn素粉末を用いる従来法ではSn液相による非平衡凝固が原因で不均-な多相組織が形成される。また、還元反応と焼結にともない体積が収縮するため、形成される組織はポーラスになる。負荷応力の調節によって気孔率を制御することにより、電気伝導を確保しながら熱伝導を低減できる可能性がある。熱電材料にとって熱伝導率を低減することは性能向上につながるため、本研究で開発を目指している作製プロセスは魅力的である。
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