研究概要 |
本年度はアルミニウム細線を樹脂に包埋し,その断面を電極に用いる微小電極を作製し,これに数10msの電圧パルスを1パルス印加して,放電時の電流応答を高速で計測する手法を確立した。さらに電極表面のSEM観察を行,放電プロセスによる酸化膜形成の基礎的な理解を深める研究を展開した。電解液として酸化膜への電解質アニオンの封入が少ないホウ酸アンモニウム水溶液とメタケイ酸ナトリウム水溶液を用いた。パルス電圧および電解液に依存して,電流応答および放電痕の形状が大きく異なることが明らかとなった。ホウ酸アンモニウム水溶液中,390-410Vのパルス電圧を印加した場合,電流は時間とともに直線的に減少し,円形の放電痕が多数生成した。そのサイズは,パルス時間に依存せず,放電痕の数が増大することが明らかとなった。すなわち,放電は一度起こったところでは再発生せず,新たな箇所で生じることになる。一方,同じ電解液中420Vおよびメタケイ酸ナトリウム水溶液中においては,放電が走ったような形態の放電痕となり,電流もパルス電圧印加の初期に急激に減少することがわかった。また,メタケイ酸ナトリウム水溶液中においては,表面に粒子状の析出物も見られた。このような電流応答および酸化膜形態のパルス電圧や電解液による違いは微小電極を用いることで明らかとなり,プラズマ電気化学コーティングプロセスの理解を深めるための重要な知見が得られた。今後,このような違いが本質的に何に支配されているのかを詳細に検討する必要がある。
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