研究概要 |
軽金属表面の機能化に関しては, 軽量, 高比強度, 生体適合性などの優れた特性を有するチタンの応用範囲を広げるための耐摩耗性酸化物コーティングに関する研究を行った。Ti, Ti-6A1-4V合金およびTi-15V-3Al-3Cr-3Sn合金のいずれにもほぼ同等の硬質でAl_2TiO_5主体の酸化膜が形成でき, 母材の耐摩耗性の大幅な向上が期待できるコーティングが形成できた。しかしながら, コーティングの密着性は母材依存性が大きく, Ti-15V-3Al-3Cr-3Sn合金では, 特に密着性が劣った。この合金上のコーティングでは, 素地との界面付近にボイドの生成が著しく, これが密着性低下の要因であることを明らかにした。ボイドの生成付近では, Snの濃縮が認められ, 酸素ガス発生がボイド形成につながっていると推定された。 プロセスの解明のための基礎研究として, 昨年度確立した微小アルミニウム電極を用いたシングルパルス電圧アノード酸化によるアノード酸化皮膜の絶縁破壊挙動の解析を進めた。電解液組成の影響について系統的な検討を行い, モリブデン酸ナトリウム水溶液, ホウ酸アンモニウム水溶液, リン酸水素ナトリウム水溶液の順に, 火花放電痕の形状が円形から線形に変化し, リン酸塩水溶液では, 放電が表面を走りやすいことが明らかとなった。プラズマ電解コーティングでは, その皮膜特性に電解液依存性が大きいことが知られている。今回得られた放電痕の形態の違いが, 皮膜特性に影響している可能性を見出し, 電解質アニオンの皮膜内への封入深さと放電挙動が関連していると推定された。また, ホウ酸アンモニウム水溶液で生成する火花放電皮膜には, 放電痕からトンネル状に伸びたボアの生成が確認され, 放電(電子)が皮膜内を界面に平行に走っている可能性があることが新たに分かった。
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