研究概要 |
Al微小電極を用いたシングルパルスアノード酸化実験から,用いる電解液によって火花放電皮膜の生成挙動に大きな違いがあることが分かった。プラズマ電気化学酸化プロセスでよく用いられるアルカリ性ケイ酸塩水溶液では,パルス電圧印加中に繰り返し放電がおこり,放電ポアの修復が起こることが明らかとなった。一方,ホウ酸アンモニウム溶液中では,放電ポアの修復は起こりにくく,耐食性コーティングとして前者の溶液が有効な一因として,放電ポアの修復性が関係していると推定された。ケイ酸塩水溶液中では,円形放電ポアが少ないが,これは繰り返し放電による修復のためで,2ms程度の短時間パルスでは円形放電ポアも存在していることを見出した。 前年度までの研究で,チタン合金への耐摩耗性コーティングの形成に成功しているが,高強度のTi-15V-3Al-3Cr-3Sn合金では,コーティングの密着性に課題があった。本年度の研究により,アルミン酸塩を含むアルカリ性電解液でプラズマ電気化学酸化を行った後に,硫酸・リン酸混合酸性電解液中で火花放電電気化学酸化を行うことで,アルカリ性電解液で生成したコーティングの耐摩耗性を損なうことなく,酸化膜/素地界面付近に生成したボイドの修復によりコーティングの密着性を大幅に改善できることを見出した。酸性電解液では,結晶性は低く,耐摩耗性が低い皮膜しか得られないが,密着性は良好であるにとから,二段階のプラズマ電気化学プロセスが有効に機能する。
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