研究概要 |
水溶液中で火花放電を伴いながらアノード酸化を行うプラズマ電気化学プロセスは,高温プロセスを適応できない軽金属(Al,Mg,Ti)材料へのセラミックスコーティングとして有望である。しかしながら,そのプロセスは複雑であり,テイラーメイドなコーティングを可能とするには,プロセスの理解を深める必要がある。本研究では,微小Al電極を用い,シングルパルスアノード酸化による放電挙動と放電に伴う酸化皮膜の形態変化に着目して検討を行った。本年度の成果として,アノードパルス印加時のみに放電が起こるとされていたが,カソードパルス印加によっても放電が起こり得ることを初めて明らかにすることができた。また,アルカリ性ケイ酸塩水溶液中,-50Vの電圧印加中においてもカソード腐食が起こることがわかった。また,プラズマ電気化学プロセスの高速ビデオ撮影から,放電の寿命は,短いものでは10μs以下となっているという新規知見をえることができた。 一方,機械的特性に優れたTi-15V-3Al-3Cr-3Sn合金にアルカリ性電解液と酸性電解液を用いた二段階プラズマ電気化学プロセスで生成した密着性に優れた耐摩耗性コーティングのTEM観察を行った。アルカリ電解では,素地との界面付近に高密度にボイドが生成したコーティングとなっていた。これをさらに酸性電解すると,そのボイドの多い領域から優先的に新たな酸化物が形成し,ボイドが修復されることがわかったこのボイドの修復が,密着性が大きく改善する大きな要因である。加えて,アルカリ性電解液の電解液温度の生成するコーティングの特性への影響を検討した。その結果,電解液温度をこれまでの室温(20℃)から5℃以下まで下げると,より高いアノード電圧までプラズマ電解酸化を行うことができるようになり,コーティング中にα-Al_2O_3が生成することでさらに耐摩耗性が向上することが明らかとなった。
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