1981年岩原らによって発見されたペロブスカイト型プロトン導電性酸化物型固体電解質は、将来の水素エネルギーシステムを支える重要な材料と位置づけられており、多くの研究が進められてきた。筆者らはこのプロトン伝導発現のメカニズムがペロブスカイト型酸化物に特有のものではなく、アクセプターをドープした酸化物において普遍的に起こるものであることを指摘し、アルミナをベースとした系について研究を進めてきた。その結果、α-アルミナの構造はプロトンが動く場として非常に良い環境であるが、プロトンの溶解量を支配するアクセプタードーパントの固溶限が極めて小さいことから溶解量が少なく、プロトン電導度は他のプロトン導電性酸化物に比べて小さいことが明らかになった。本研究ではこの水素の溶解度を高めるために、高温からの急冷によりアクセプタードーパントの過飽和状態を凍結する方法、並びに固溶限の大きな成分を含むアルミナを高温で電解処理することによりその成分を強制的に還元してアクセプタードーパントとし、それに見合った水素が導入された状態を低温まで持ち来すことにより電導度の高い強制固溶型プロトン導電体が得られることを実証し、さらに、そのメカニズムを定量的に解析して、この手法を一般的な調製法として確立することにより、強制固溶型プロトン導電性酸化物固体電解質の創製を目指すものである。
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