研究概要 |
省エネルギー型物質分離機能を有する混合導電体膜をキーマテリアルとした物質の分離と変換を同時に行なうメンブレンリアクター(MBR)は、省エネルギー型の新しい触媒反応プロセスとして高いポテンシャルを有している。本研究では、膜材料、触媒材料並びに膜反応器の構築の観点から高度化を図り、それらを総合して混合導電体MBRの構築のための科学技術を確立することを目的とする。 メタン部分酸化(POM)用MBRでは、耐還元性と高い酸素透過能を併せ持つ(Ba_<0.3>Sr_<0.7>)_<0.98>Fe_<0.9>Ga,_<0.1>O_<3-δ>を膜材料とし、種々のNi系部分酸化触媒を用いて実験を行った。その結果、ハイドロタルサイト型(HT)前駆体から得られたNi/Mg-Al-Oを用いた場合、高いメタン転化率および合成ガス選択性特性を示したが、今後は炭素析出抑制が課題である。また、MBRの定温作動化に必要なPOM用触媒の探索を行い、組成を最適化したNiとCuを含むHT前駆体から得られるNi-Cu/Mg-Al-O触媒が新規な定温作動型POM触媒であることを見出した。 次に、プロトン導電体相と電子導電体相を有する混合導電体(異相混合導電体)膜を用いた、水素分圧差を駆動力とする水素分離についての検討を行った。プロトン導電体としてCsHSO_4とNafion、電子導電体としてAg粉末とNickel foamを用い、その実証を試みた。その結果、着想した異相混合導電体による電気化学的水素透過の可能性は示唆されたものの、確信をもった結果とするためには膜の緻密性を向上させ、物理的透過を抑制することが不可欠である。またNafionを基材とした場合には、物理的透過が完全に防げる場合があることから、イオン導電相と電子導電相それぞれが連結した膜を作成できれば、提案した異相混合導電体が得られる可能性があることがわかった。
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