研究課題
静止軌道衛星で衛星表面の帯電に起因した放電事故が増えている。これまでの研究で導電体と高分子フィルム絶縁体を隣接させることで、フィルムが高エネルギー電子によって帯電すると同時に両者の境界付近の電界が高まって、空間に露出された炭素系接着剤から電子が放出されることを見いだした。これは一種の電界放出素子であるが、センサや電源を必要としない完全受動型素子である。本研究の目的は、この電子エミッタについて(1)動作原理の詳細な解明と(2)軌道上実証用素子の開発を行なうことである。2008年度の成果は以下の通りである。・供試体作成時にエミッタ素子にひび割れが発生することが確認されたため、製造工程を改善し、高温焼成することによってひび割れを防止した。・真空容器内で連続動作試験を行い、素子が安定して100時間動作することが確認できた。現状の開発品では当初予定していた突起周辺部分の幾何学的相関関係がほぼ達成されていることも考え合わせ、加工精度は十分であると考えられる。・-150℃から+100℃の温度サイクルを印加した後でも、供試体の電子放出性能に影響のないことを確認した。・静止軌道で10年分相当の陽子線を照射した後でも、外観に影響のないことを確認した。・衛星帯電解析ソフトMUSCATに電子エミッタモデル機能を追加し、静止軌道サブストーム状態であっても、エミッタの動作によって衛星電位が0となることを確認した。
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