研究課題
静止軌道衛星で衛星表面の帯電に起因した放電事故が増えている。これまでの研究で導電体と高分子フィルム絶縁体を隣接させることで、フィルムが高エネルギー電子によって帯電すると同時に両者の境界付近の電界が高まって、空間に露出された炭素系接着剤から電子が放出されることを見いだした。これは一種の電界放出素子であるが、センサや電源を必要としない完全受動型素子である。本研究の目的は、この電子エミッタについて(1)動作原理の詳細な解明と(2)軌道上実証用素子の開発を行なうことである。2009年度の成果は以下の通りである。・ エミッタ素子製作時の歩留まりを測定するために、24個の供試体に対して性能評価試験を実施し、22個の素子から電子放出を確認した。・ -150℃から+150℃の温度サイクルを1000回印加した供試体からも、電子放出を確認した。・ 静止軌道で10年分に相当する10MeVの陽子線並びに1MeVの電子線を照射した後でも電子放出を確認した。・ 供試体に静止軌道4年分相当の紫外線を照射した。・ エミッタ表面の絶縁体をより高抵抗の物質に置き換え、低密度の帯電電子電流環境であっても、動作することを確認した。・ エミッタ表面に特殊なコーティングを施すことで、性能が向上することを確認した。・ ELF表面の状態を2μmの空間分解能をもつ電界電子放出顕微鏡で観察し、数100倍の電界増倍係数をもつ電界放出点が金属表面に多数存在することを確認した。
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