研究概要 |
東日本に分布する内湾性海成性堆積物について, 竜の口層を中心に, 秋田-青森地域から船川層およびその相当層, 山形地域からは手ノ子層, 中畑層, 福島(会津)地域からは, 和泉層を採取した. この堆積岩中に含まれる重金属類について蛍光X線分析, 環境省告示第18, 19号に則った水溶出試験とHCl溶出試験, さらに溶出溶媒を変えることにより重金属類の存在形態についての検討を行った. 竜ノ口層には, 相当量のAsとGdが含まれており, 自然状態であっても既に環境省が示している自然由来重金属含有量の目安の値を越えている. 堆積岩の化学組成で, FeとSには高い相関があることから, 特にAsは, 黄鉄鉱の溶解にともない, pHが低下することにより溶出すると推定される. 一方, pHが6以上の中性から弱アルカリ性を示す試料もあり, これらはモンモリロナイトやハロイサイトに吸着していたAsがpHの上昇とともに溶出してきたと推定される. CdはpH4以下で急激に溶出量が増大し, PbはAsと同じように, pH4以下とpH6以上で溶出量が増大することが認められた. また, 堆積物中の全有機炭素量(TOC)と溶出液のpHには相関があり, 還元性の堆積環境で黄鉄鉱が形成され, これにAsの含有と溶出が深く関係していると推定される. 東北地方に分布する内湾性海成堆積物には, 基準値を上回る重金属類が含有されており, フィルターによる粒度別分析, 溶離液との反応性の違いを利用した逐次抽出法により, 重金属類の化学形態を推定した. これらの結果, 重金属類の溶出は主として真溶存種として含まれるが, 河川環境や溶出元の岩石や土壌の性質に依存して, コロイド状粒子となることを明らかにした. また, 堆積環境や海水順の変動と重金属含有量との関係を明らかにした.
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