研究概要 |
本研究では、宿主がトランスポゾンと通常の遺伝子とを区別する機構、およびエピジェネティックな多様性の生物学的意義について研究することを目的としている。平成19年度には、以下のような成果が得られた。 (1)宿主がトランスポゾンと遺伝子とを区別する機構として、遺伝子のメチル化を防ぐ新奇遺伝子を同定した(Saze, et. al.2008 Science)。この経路の作用様式を理解するため、エピジェネティックな制御に関与する他の遺伝子との相互作用を調べている。 (2)ddm1で誘発される発生異常の一つを遺伝解析することにより、新奇のシロイヌナズナ内在レトロトランスポゾンを同定した(未発表)。これは、実験室で転移の観察されたシロイヌナズナの内在性レトロトランスポゾンとしては初めてのものである。これを研究材料として、エピジェネティックな活性修飾の安定性や、野外集団中での挙動を調べる予定である。 (3)インプリント遺伝子FWAでは、SINE配列が縦列型に反復したプロモーターのメチル化によって発現の修飾が起こる(Kinoshita, et. al.2007 Plant J.)。シロイヌナズナの同属近縁種を調べることにより、縦列型の構造をとらなくても、この遺伝子のエピジェネティックな抑制は起こり、メチル化も起こることがわかった(Fujimoto, et. al.2008 PloS Genetics)。
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