研究概要 |
申請者らは,1986年に世界ではじめて色素体(葉緑体)が独自の分裂装置(色素体分裂リング;PDリング)を使って分裂増殖していることを原始紅藻Cyanidium caldariumで発見した。更に1986年に真正粘菌で,続いて1993年に原始紅藻Cyallidioschyzon merolae(略称シゾン)でミトコンドリアが分裂装置(ミトコンドリア分裂リング;MDリング)を使って分裂。増殖していることを発見した。更に,シゾンで,色素体の分裂装置を構成するリング類がミトコンドリアにも存在することを明らかにし,現在では両オルガネラとも"ダイナミックトリオ(FtsZリング,PD/MDリング,ダイナミンリング)"を使って分裂していることが明らかとなった(Nishida, et. al.PNAS2003;Miyagishima, et. al.Plant Cell 2001,2003;Yoshida, et. al.Science2006)。本研究の目的は,これまでの成果を踏まえ,葉緑体の分裂装置であるPDリング複合体を大量かっ無傷に単離し,それを構成する全タンパク質の遺伝子を同定すること,及び葉緑体の解析系を使って,ミトコンドリアの分裂装置であるMDリング複合体を無傷に単離し,構成する全タンパク質とそれらの遺伝子を同定することであった。初年度はこの最初の段階の研究を進め,先ず葉緑体分裂装置を単離した。これから電気泳動により,タンパク質を分離するとともに,それをTOF-MSにかけ,100%ゲノムの配列を読んだ情報を使って,遺伝子を同定した。約20種余りのタンパク質と遺伝子を同定できた。更に詳しい解析を抗体などの作製により行った。またミトコンドリアなど他のオルガネラに関しても同様の方法で単離することを開始した。
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