研究課題
水中生活を行う魚類では常に口中に水が存在するため、嚥下のみで飲水することができる。いっぽう陸上動物では、「渇き」に動機づけられて水を探し、水を口に含んでから嚥下することで水を飲む。すなわち、魚類では前脳にある中枢で生じる「渇き」の感覚なしに飲水することが可能である。その証拠として、ウナギの前脳を完全に摘出してしまっても飲水刺激により飲水が生じる。これらのデータを基に、平成21年度は次の成果を得た。1)後脳にある最後野とよばれる脳室周囲器官に嚥下に関与する中枢があることがわかった。その証拠として、最後野を局所破壊すると飲水惹起ホルモンであるアンジオテンシンや、飲水抑制ホルモンである心房性ナトリウム利尿ペプチドが効かなくなること、および飲水を促進する脱血(血液量の減少)やウナギでは飲水を抑制する血漿浸透圧の上昇も最後野を破壊すると無効になることがわかった。2)脳室周囲器官は血液脳関門が不完全なため、ホルモンなど血液中の情報を受容することができるが、哺乳類でアンジオテンシンの飲水惹起作用の標的器官とされている終板器官がウナギにも存在することが示唆された。すなわち、血漿タンパク質であるアルブミンと結合するため血液中に投与すると血液脳関門を通過しないエバンスブルーをウナギの血液中に投与すると、視交叉上の正中部にある終板器官らしき部位が青く染まることを見つけた。今後は終板器官でも血液中の飲水刺激を受容して魚類でも「渇き」を惹起している可能性を検討する。すなわち、魚類では前脳にある終板器官による「渇き」の調節と、後脳にある最後野による「嚥下」の調節により2重の調節を受けている可能性がある。
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