研究課題
平成21年度は、昨年度に引き続き、スズキ類(Percomorpha)を中心にミトコンドリアゲノム(ミトゲノム)全長塩基配列のデータ収集をおこなうとともに、多くの目(もく)を対象として、ミトゲノム分析にもとづく系統解析をおこないその結果を取りまとめた。これにより、魚類学上重要な多数の成果を得た。代表的な成果として、1)主要系統群の起源が南アジアであることをつきとめたコイ目の解析;2)淡水ウナギの起源を深海に特定したウナギ目の解析;3)体サイズの極端な小型化が繰り返し起こったことを明らかにしたニシン目の解析、などがある。このうち2)の成果を取り上げ、もう少し詳しく述べる。ウナギ科ウナギ属魚類は、海域で産卵し淡水域で成長する。とくに東アジアの淡水域に生息する「ニホンウナギ」は、3000km以上離れたグアム島沖まで産卵回遊することで有名である。産卵場と生育場との間を回遊する水生生物では、祖先の生息場所は現在の産卵場であると想定されることが多く、ウナギ科魚類についても、これまで漠然と祖先は海に生息していたと考えられてきた。しかし、この仮説をサポートする証拠は無かった。そこで我々は、ウナギ科が属するウナギ目の全19科を網羅した分子系統解析を世界で初めておこなった。その結果、ウナギ科魚類は、外洋中・深層に生息するフウセンウナギ類,シギウナギ科,ノコバウナギ科を含む大きなクレードの内部に位置づけられることが判明した。この系統関係にもとづいて祖先種の生息地を復元したところ、ウナギ科の祖先は深海域に生息していた可能性が非常に高いという結果が得られた。以上の成果は、ウナギの祖先が深海に生息していたという仮説に、世界で初めて系統学的証拠を与える非常に意義深いものとなった。
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