研究概要 |
「細胞運動システムの階層的機能構築」というテーマで、分子モーターシステムの"酵素機能における力の役割"を1分子レベルから分子集合体、ひいては細胞に至るまでの階層構造に着目して研究を進めている。本年度は、1)単一筋原線維の張力発生特性を、同じ筋原線維について幾つかの条件で繰り返し測定することができる顕微実験系を構築し、とくに中間活性化条件(Caイオン非存在下で高濃度ADPによって活性化するADP収縮条件と、通常のCaイオン濃度を中間に設定した活性化条件の2つ)で系統的に調べた。その結果、いずれの中間活性化条件でも、最大活性化条件とは異なる筋節長-発生力関係を示すこと、さらに、ある狭い範囲の中間活性化条件で、自発的振動収縮(SPOC)現象が見られること、しかも、この異常な筋節長-発生力関係やSPOCには、ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントの間隔(格子間隔:平均で20数nm)の僅かな(1nm以下の)変動が大きく影響することなどが分かった。これらの成果はShimamoto, Y., et. al.(2007) "Nonlinear Force-Length Relationship in the ADP-Induced Contraction of Skeletal Myofibrils"としてBiophys.J.93,4330-4341.に発表したが、同号にNew and Notableとして取り上げられた。2)一方、高次構造レベルでの研究では、カエル(Xenopus)卵から抽出した染色体分裂装置の力学特性を、カンチレバーを用いて計測し、硬さや形状変形に関する新しい知見を得た。この成果は現在国際誌に投稿中である。3)単一細胞に熱パルスを与えることの影響を、Caイメージングや温度イメージングによって検討することができる、新しい細胞生物学的手法をほぼ確立した。
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