研究概要 |
本研究は、EGF-Ras-MAPK回路の細胞内情報伝達反応を題材として、蛋白質分子反応、細胞内分子システム、細胞応答の各階層において反応ゆらぎとその伝搬・加工の実測と、その性質と役割の解明を目的とする。分子反応においてはEGF受容体とRasの反応、分子システムレベルでは、EGF受容体-Rasの反応回路と、Rasの下流に位置するMAPKカスケード、細胞レベルでは、EGFに対する細胞変形・運動、増殖応答を研究対象としている。本年度、分子反応計測においては、EGF受容体の分子認識反応に重要な細胞質部位のの構造ゆらぎを実測するための実験系構築を行った。受容体細胞質部位の発現・精製系を構築した。また、1分子から蛍光発光した光子を実時間で捉え、光子密度変化から分子の状態変化を最尤推定することにより、100photon(10〜100μs)程度の精度で分子ダイナミクスを計測する装置の組み立てを行った。情報伝達分子システムにおいては、Ras,Raf(MAPKKK)および細胞膜の未知のリン酸化酵素3者の複合体によるRaf活性化経路を1分子解析し、反応キネティクスモデルを構築した。また、ERK(MAPK)の活性化反応の再構成と反応シミュレーションを行った。細胞レベルでは、細胞集団中の単一細胞毎にERKの活性化と細胞応答(増殖・分化)の対応関係を明らかにするため、分子プローブの作成と安定発現細胞の作成を行った。
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