細胞増殖・分化・細胞死などの細胞運命決定に関与する細胞内情報伝達回路であるEGF-Ras-MAPKシステムの反応を題材として、蛋白質分子反応、細胞内分子システム、細胞応答の各階層において反応ゆらぎとその伝搬・加工を実測して、その性質と役割を明らかにする。細胞が外来性および内在性の反応ゆらぎ(ノイズ)を克服する仕組み、さらには、反応ゆらぎが細胞応答の柔軟性の発現などに積極的に利用されている可能性を探る。 (1)分子反応においてはEGF受容体とRas/Raf(MAPKKK)の反応に注目し、これらの情報蛋白質と相互作用相手分子の反応時系列解析を行って、分子レベルでの情報処理機構を探る。(2)分子システムレベルでは、EGF受容体-Rasの反応回路と、Rasの下流に位置するMAPKカスケードにおいて、入出力応答および反応ゆらぎの伝搬を計測する。(3)細胞レベルでは、EGFに対する細胞変形・運動、増殖応答のゆらぎ・分布を細胞内反応と関連づけて解釈することを目指す。
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