オートファジーは、真核生物に普遍的な細胞内大規模分解システムとして、飢餓時の栄養源確保から病原体排除まで多彩な機能を持つ。これらの機能の多くは生命維持に関わっており、オートファジーの多面的活用による生存戦略が存在するといえよう。オートファジーの役割の解明が進む一方で、その分子機構はいまだ謎が多い。本研究課題では、生存戦略としてのオートファジーという観点からその分子解剖を行う。本年度は以下の成果を得た。 1. オートファジー関連タンパク質Atg中唯一の膜タンパク質で普段はゴルジ体に局在しているAtg9の機能解析を行うために、各種欠損変異体を作り、既に作成していたAtg9-KO細胞に発現させた。それらの解析から、細胞質に露出しているC末領域はAtg9のゴルジ体局在化やオートファゴソーム形成能力に必要ではない一方、N末の特定モチーフがゴルジ体局在化と機能の両方に必要であることを見出した。恐らく、Atg9のゴルジ体局在化がオートファゴソーム形成に必要であると思われる。 2. 薬剤などでリソソームの膜を損傷すると、速やかにAtgのリクルートが起こり最終的に損傷リソソームは分解される。Atg-KO細胞では分解は起こらず、細胞内に蓄積する。損傷リソソームは細胞にとって有害なので、オートファゴソームによって隔離され、その後残っている他の正常リソソームとそのオートファゴソームが融合して損傷リソソームが分解されるものと思われる。 3. Atgタンパク質のインタラクトーム解析から、ULKI(Atgl)複合体とLC3(Atg8)脂質化反応系が直接結合することを始めて明らかにした。
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