研究概要 |
1)前後のパターニングにおけるNodalシグナルの役割 胚の前後の決定には,DVE/AVEと呼ばれる細胞の形成・移動が必須である。DVE/AVEは、NodalシグナルとBMPシグナルの拮抗作用によって生じる。すなわち、前者が陽性でかつ後者が陰性な部位に、DVE/AVEが形成される事が判った。 2)レチノイン酸(RA)によるNodal遺伝子の制御 レチノイン酸代謝酵素(Cyp26a1,b1,c1)を欠損するマウスを解析したところ,嚢胚形成前にパターニング異常を引き起こし,二次軸を形成していた。その原因は,本来は胚の後側だけに発現するNodalが、胚全体に発現するためであった。Nodal遺伝子のイントロン内に存在する、進化的に保存されたRA反応性のエンハンサーが、Cyp26欠損下で上昇したRAに反応していた。すなわち、発生の極早い時期(嚢胚形成前)においては、母体に由来するRAは胚のCyp26によって不活性化される必要がある。 3)FoxH1の標的遺伝子 FoxH1変異マウス胚や、Nodalシグナルを抑制する薬剤で処理したマウス胚を用いて,Nodalシグナルの変化によって発現が変動する遺伝子を探索した結果,5つの遺伝子を同定した。各遺伝子について、lacZをノックインしたBACを持つトランスジェニックマウスを作製した結果、現在少なくとも一つの遺伝子については,FoxH1結合配列の重要性が確認することができた。
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