研究概要 |
コスタリカ国サンタロサ国立公園に生息する野生シロガオオマキザル8群,野生クロテクモザル3群から糞サンプルを収集し,DNAを抽出精製した。それらの一部に対し,赤-緑オプシン遺伝子の遺伝子型判定を行ない,赤-緑オプシン遺伝子と中立対照遺伝子の非コード領域を含めた塩基配列の集団解析を行なった。これにより両種ともに,赤-緑オプシンの対立遺伝子多型に平衡選択が働いていることを,塩基多様度,塩基多型度,Tajima's D値の解析により明らかにした。 超小型スペクトロメータを用いて様々な条件下(時刻,天候,天蓋の密度など)で環境光を測定し視覚対象物の色度計測を行った。クモザル,オマキザルの各個体の採食品目及びそれらの採食頻度を個体追跡により調査した。 果実食性のクモザルにおいては色覚型によらず,果実採食効率と果実,葉の明度コントラストの大きさに有意な正の相関があることを明らかにした。さらにそのことが2色型色覚と3色型色覚の間に果実採食効率の差が見られない理由と考えられた。 雑食性のオマキザルについては,色覚型による食性の違い,昆虫食と果実食への時間配分の違い,赤黄系果実と隠蔽色系果実への採食時間配分の違いを調査し,色覚型による違いがないことを明らかにした。 新世界ザルとの比較対照として,狭鼻猿でこれまで色覚あるいはオプシンについて知見のなかったテナガザルを解析対象に加え,3属6種約60個体について赤-緑オプシン遺伝子をPCR法で単離し,塩基配列を調べ,正確な色覚型判定法を確立した。
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