研究課題
コスタリカ共和国サンタロサ国立公園に生息するクロテクモザルとシロガオオマキザルの糞のサンプルからDNAを抽出精製し、赤-緑オプシン遺伝子の遺伝子型判定を進めた。赤-緑オプシン遺伝子と中立対照遺伝子の非コード領域を含めた塩基配列の集団解析を行ない、平衡選択の検証を行なった。高度に多型的なマイクロサテライトマーカーによるDNA分析を行い、群れの遺伝的集団構造と群れ間の遺伝的分化についての情報を得た。ミトコンドリDNAの配列を集団サンプルに対して決定した。超小型スペクトロメータを用いて様々な条件下(時刻、天候、天蓋の下、直射日光の下など)で環境光を測定し視覚対象物の色度計測を行なった。各個体の採食品目及びそれらの採食頻度を個体追跡により調査し、他の感覚の使用の状況(匂いを嗅ぐ、触るなど)を調査を進めた。これらにより赤-緑オプシン遺伝子は他の平均的なゲノム領域に比較して、極めて高い種内変異を持ち、平衡選択が働いていることを明らかにした。常染色体性のマイクロサテライトと母系遺伝するミトコンドリアDNAの多様性を群れ内と群れ間、オスとメス間で比較することにより、母系的社会構造をもつとされるオマキザルではミトコンドリアDNAの集団分化が顕著である一方群れ内の多様性は低く、父系的社会構造をもつとされるクモザルでは群れ内のミトコンドリアDNAの多型性が高いという結果が得られ、行動観察からの社会構造の知見を強化することができた。オマキザルの果実採食の行動観察から、赤-緑オプシン遺伝子の最大吸収波長の違いがより大きなアレルの組合せをもつ3色型色覚個体はより小さなアレルの組合せの3色型色覚個体より果実選択の正確性が高い結果が得られた。ただし、時間当たりの採食量は2色型と有意差はなく、3色型色覚の有利性はやはり判然としなかった。昆虫採食の効率は2色型色覚が高いことがさらなるデータにより補強された。これらは色覚進化を考える上で重要な知見である。
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