本研究計画は、エチオピアとケニアから出土している化石資料の精密CT撮影を行い、化石類人猿から人類への進化の様相をより精細に解明することを目的としている。その内容は、二つの要素からなる。一つは、四肢関節内部の骨梁解析から四肢関節に加わる負荷様式がどのように変化したかを明らかにすることである。もう一つは、エナメル質分布に注目した中新世類人猿と人類の歯牙の三次元構造解析である。中新世人類発見以降、最初期の人類の起源と進化研究において、歯のエナメル質厚さの進化様式が重要な論争点となっている。そこで、エチオピアで発見されたラミダス猿人、カダバ猿人など最初期の人類の歯牙形態の変化を精密CT撮影によるエナメル質分布に注目し解析をおこなう。今年度はX線CT装置、XCTmicro-scope Research SA+(Stratec co.)を購入し、精度評価、化石を念頭においた撮影条件の検討をおこなった。その後、研究分担者の諏訪が3月にエチオピア国立博物館(エチオピア、アジスアベバ)へ輸送し、約4週間の化石資料撮影を行った。対象はアルディピテクス、アウストラロピテクス・アファレンシス、アウストラロピテクス・ボイセイ、チョローラピテクスなどである。このデータは現在解析中である。その一方、中務はこれまでケニア国立博物館などで収集した化石の断層撮影画像の分析を進め、霊長類の四肢骨の骨梁に関する研究論文を発表した。
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