初期人類と化石類人猿の進化研究にとって重要な化石資料の多くは、アフリカで発見されている。そうした資料の多くは、法律等の制約により、日本へ貸借することが難しい。一方、ほとんどの原産地国では、研究のための機器類の整備状況が悪く、特にCTなどの先端分析器を使った研究を国内施設で行うことは非常に難しい。この研究は、現地に小型CTを一時輸出して、そうした化石資料を対象に精密CT撮影を行い、化石類人猿から人類への進化の様相をより精細に解明することを目的としている。今年度は、ケニア国立博物館(ナイロビ)へCT装置を輸出し、同博物館所蔵の資料の断層撮影を行った。対象は、後期中新世ナカリ層出土の霊長類化石、タンザニア、オルドバイ峡谷から出土し、ケニア国立博物館で管理されているホモ・ハビリスの手骨格(OH7)、他、比較のため、大型のオナガザル科霊長類の四肢骨である。OH7は、未成熟個体の手骨格であるが、手根骨の内部骨梁構造や緻密骨分布の解析によって、機能的特性を評価する計画である。一方、昨年度エチオピア(アディスアベバ)で計測したラミダス猿人、カダバ猿人、類人猿チョローラピテクスのCTデータ分析については、現在継続中であるが、可能な限り至近に、ラミダス猿人の研究論文として発表する予定で作業を続けている。研究成果の一部は、日本霊長類学会、日本人類学会、日本アフリカ学会等で発表した。また、化石霊長類と比較する目的で撮影していた現生オナガザルの腸骨内部骨梁構造に関する研究論文をPrimates誌に掲載した。
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