研究課題
本研究は、既存の栽培試験データと生育モデルを用いた作物品種の環境応答性の評価、および分離集団の多環境試験を利用した遺伝子と遺伝子ネットワークレベルの遺伝解析を通じて作物の環境応答特性の遺伝的メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、過去の水稲育種栽培データと既存の生育予測モデルを用いて、全国8地点、13カ年の生育・収量の地域性を解析した。その結果、同じ品種の比較であれば、同一のパラメータで広範な環境条件における生育・収量を再現できたことから、モデルを品種の環境応答性の定量的な解析に利用できることが確認された。また、出穂の早晩性に関わる温度および日長応答の品種特性を定量化するために、既存の栽培試験の出穂日と気温データから、発育モデルのパラメータの分布をマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)で推定する方法を検討したところ、MCMC法を適用してパラメータとその事後分布を推定することによって、これまでは評価が難しかった環境応答性のパラメータ値の不確実性に関する情報が示され、品種の環境応答の客観的評価が可能になった。分離集団を用いた環境応答特性のQTL分析を行うために、発育モデルと遺伝モデルを組み合わせて、早晩性の環境応答に関わるQTL検出のためのモデル構造を決定した。これは、遺伝モデルにおけるQTL効果を環境関数で表そうとするもので、これまでの方法に比べて高いQTL検出力を持つことが期待される。また、分離集団の多環境栽培実験の予備実験として、コシヒカリ/カサラスの戻し交雑自殖系統182系統の発育特性を調査した。次年度以降のデータをあわせて、発育・遺伝モデルを用いた解析に資する予定である。
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