研究課題
本研究は、既存の栽培試験データと生育モデルを用いた作物品種の環境応答性の評価および分離集団の多環境試験を利用した遺伝子と遺伝子ネットワークレベルの遺伝解析を通じて作物の環境応答特性の遺伝的メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、イネ成長モデルにおける光合成、気孔コンダクタンス、器官形成、窒素分配といった作物生理パラメータの感度解析を、全国8地点を対象に実施した。その結果、穂への窒素分配に関するパラメータなどは、異なる環境条件においても類似した応答を示すのに対し、群落形態や気孔コンダクタンスなどの影響は地域によって異なることがわかった。コシヒカリ/Kasalath戻し交雑自殖系統を異なるCO2濃度条件の環境制御チャンバーにて栽培し、CO2に対する栄養成長応答の遺伝的変異を調査したところ、680ppmの高CO2農度処理による乾物生産への影響は、-25~56%と遺伝子型によって大きく異なり、高CO_2への応答を左右するQTLが1つ検出された。これまでに収集したコシヒカリ/Kasalath戻し交雑自殖系統の多環境試験(つくば市(4作期)、野々市町、福岡市、石垣市、ベトナム(2地点)の9環境)について、発育モデルを組み入れたQTL解析手法と従来のQTL解析手法とを比較したところ、発育モデルを取り入れたQTL解析手法では、個々の環境のデータでは検出できなかった遺伝子座を検出できることがわかった。さらに、発育モデルの温度、日長依存性に非線形性を導入することによってQTLの検出力が大きく高まることが明らかになった。このほか、イネの多様な水環境への環境応答・適応性においても生態型間で大きな変異が存在することを明らかにした。
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Plant and Soil (in press)
Plant Root 3
ページ: 16-25
Plant Production Science 12
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