1)イネのサイトゾル型グルタミン合成酵素1;3(GS1;3)とNADHグルタミン酸合成酵素2(NADH-GOGAT2) これら新規のGS1;3とNADH-GOGAT2の機能解明のため、レトロトランスポゾンTos17の挿入による遺伝子破壊変異体をそれぞれ獲得できた。同時に、OsNADH-GOGAT1の遺伝子破壊変異体のスクリーニングを進め、1ラインではあるが変異体の獲得に成功し、遺伝子破壊による生育や代謝変化の予備的調査を開始した。また、OsGS1;1遺伝子破壊変異体と野生株を用いて、トランスクリプトーム・メタボローム解析を進め、体内のC/Nバランスが大きく変化している結果を得た。これらの成果は、平成21年3月開催の日本植物生理学会で報告した。 2)窒素利用効率の向上 低アンモニウムイオン供給に応答して、根の伸長と窒素吸収の促進に関わるQTL領域から、原因遺伝子である転写因子を同定した。本遺伝子は、インド型イネのカサラスで変異が入り機能破壊により根の伸長と窒素吸収が促進されることが判明した。World Rice Collection 66品種を用いて解析した結果、日本型は全てコシヒカリと同様にアンモニウムイオンに対する応答はなく、カサラス型の全ての品種は機能破壊型であることが判明した。この転写因子の標的遺伝子を探索中である。現在、これらの成果を公表すべく、論文を作成中である。また、同じく低濃度に応答して表現型や窒素吸収に変化をもたらす第8染色体や、地上部乾物重に影響を与える第2染色体のQTL領域を10.6kbまで狭め、原因遺伝子の単離を目指している。
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