研究課題/領域番号 |
19208017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 淳司 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40183842)
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研究分担者 |
今井 友也 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (90509142)
馬場 啓一 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (20238223)
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キーワード | セルロース / 酢酸菌 / 緑藻 / 膜タンパク質 / 界面活性剤 / c-diGMP / β1→3-グルカン |
研究概要 |
酢酸菌あるいはチリモ(緑藻)を実験材料として使用し、細胞破砕・遠心分画・界面活性剤処理により膜タンパク質を可溶化し、UDP-グルコースを加えてセルロースの合成をおこなわせた。 前者を利用したセルロースのin vitro合成系はすでに報告されているが、その合成されたセルロースの構造解析は、X線回折によりセルロースIIであることが報告されているのみで、詳細な解析はなされていない。そこで赤外スペクトル、電子顕微鏡、電子回折、MALDI-TOF-MSによる総合的な構造解析を行い、合成されたセルロースはセルロースIIであること、セルラーゼの逆反応で作られるような板晶と異なり不規則な形態であること、オリゴマーではないことを明らかとした。また、デシルマルトシドなど、近年膜タンパク質研究で使用されている非イオン性界面活性剤が使用可能であることを初めて示した。またこの研究の過程で、酢酸菌のセルロース合成活性の促進因子であるc-diGMP(環状二グアニル一リン酸)の酵素合成系を開発した。 植物を材料としたセルロースin vitro合成系の問題点は、膜タンパク質抽出の過程で傷害応答性多糖であるβ1→3-グルカンの合成が活性化されてしまい、セルロース合成活性を凌駕し隠してしまうことが一つに挙げられる。チリモの細胞壁にはβ1→3-グルカンが存在することは報告されていないことから、本材料はセルロースin vitro合成系の材料として適当だと考え、実験を行った。しかしながら、チリモを用いて実験を行った場合でもβ1→3-グルカン合成活性が優勢であった。ただし、電子顕微鏡下でセルロースと思われるような長繊維が観察され、赤外スペクトルでも微弱ながらセルロース由来の吸収が現れたことから、さらなる条件最適化でセルロース合成活性を単離できる可能性が存在すると考えられた。
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