マイワシ太平洋系群中、西日本沖合で産卵されて東日本沿岸域に来遊した稚魚群の孵化時期が主産卵期である2、3月であったのに対して、親潮域へ北上した稚魚群の孵化時期が4、5月と産卵期末である点で異なっていることが分かった。 仙台湾において卓越した05年級では、仔魚期成長速度は06年級より高かったが、サイズ選択的減耗が大きかった。05年級の変態期仔魚の80%が成育場周辺の浅海域に分布したが、06年級ではその割合が35%と低かった。成育場へ輸送される仔魚の割合が加入量変動を左右すると考えられた。 寒流域のエゾアワビでは、冬期間における生残率の年変動が大きく、2月の水温が低い年には生残率が著しく低水準となることが明らかとなった。一方、暖流系のトコブシでは、放卵・放精が台風通過により、誘発され、台嵐の通過時期が、浮遊幼生の発生最や初期稚貝および稚貝の生残・成長を通じて新規加入量を変動させる要因と考えられた。 安定同位体比分析等により、餌料環境とアサリの成育状態との関係を解析した。干潟の岸寄りや河川寄りの地点でアサリの成長が遅く、グリコーゲン含量は成長と正相関にあることがわかった。 流速データを同化した流動・粒子追跡結合モデルを用いて、相模湾の暖流系大型アワビ類3種の幼生輸送を再現した。保護区の親貝由来の幼生の経路として、沖へ出た後に浅海域へ輸送、緩やかに沖へ輸送、などが示唆された。また、現存の保護区設置場所で産卵された群は、他海域で産卵された群よりも、着底期における親貝生息水深の海域への幼生輸送割合が高いことが示された。
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