相模湾で漁獲されたイワシ類3種の仔魚成長速度の温度依存性を調べたところ、ウルメイワシの成長速度の季節変動は水温によって説明された(R^2=0.71~0.93)。カタクチイワシ仔魚の成長速度はやや低い有意水準(R^2=0.52~0.69)ながら水温依存性が見られた。これに対してマイワシ仔魚成長速度と水温の間には有意な関係がなく、マイワシ仔魚は水温ではなく餌密度に依存した成長速度変化を示すと考えられた。 変態期ヒラメの平均日齢と稚魚の着底時日齢を調べたところ、丹後海では仙台湾・常磐海域よりも変態期が長く、変態から着底までにより多くの日数を要していることがわかった。低水温で発育する南西日本では、変態から着底までの猶予時間が長く、そのために多くの個体が着底できるが、北東日本では高水温のために着底に適した発育段階の日数が短く、この時期にうまく着底できるか否かが、年級群水準を左右すると推察された。 野外調査と安定同位体比解析により、エゾアワビの天然生息域における成長に伴う食性と棲み場の変化を調べ、これまでに室内実験等で推定されていたと同様の変化が起こっていることを明らかにした。さらに飼育実験を加えて、エゾアワビの生息場における食物網構造を明らかにし、発育段階別に捕食者を推定した結果、初期成育場である無節サンゴモ上に高密度に生息するキタムラサキゥニが、エゾアワビ稚貝を捕食することがわかった。 餌料環境とアサリの成育状態との関係を安定同位体比によって解析した結果、干潟の岸寄りや河川寄りの地点でアサリの成長が遅いこと、身入りやグリコーゲン含量が殻長成長と有意な正の相関にあることが明らかとなった。また、アサリの安定同位体比が成長速度と有意に相関することが確認され、餌の差が成長速度に影響を及ぼすことが明らかとなった。
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