研究分担者 |
岩槻 幸雄 宮崎大学, 農学部, 教授 (60213302)
遠藤 広光 高知大学, 理学部, 准教授 (50284427)
木村 清志 三重大学, 生物資源学部, 教授 (00115700)
瀬能 宏 神奈川県立生命の星, 地球博物館, 主任研究員 (80202141)
西田 睦 東京大学, 海洋研究所, 所長 (90136896)
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研究概要 |
黒潮はフィリピン東方に発し,台湾を経て,東シナ海を北上し,九州と奄美大島の間のトカラ海峡から太平洋に入る。この強大な海流は九州南方で枝分かれして,枝流(対馬暖流)は日本海に入るが,本流は太平洋沿岸を北上して,房総半島付近に達し,そこで東へ向きを変えてハワイ諸島に向かう。日本南部に南方系魚類が見られるのは黒潮に起因すると言われている。では,南方系魚類は黒潮の影響を具体的にどのように受けているのであろうか。実は黒潮が,どの地域からどこへ,そして,どのようにして魚類を運んでいるかは分かっていない。「黒潮による南方系魚類の運搬」は恐らく間違いのない事であろうが,説得力のある多くのデータに基づいて検証されたことはない。 我々は魚類の画像5万7千件を収録した「魚類写真資料データベース」を構築し,浅海性魚類のデータを1万件抽出して解析することによって,日本の南部太平洋沿岸の魚類相に黒潮が大きな影響を与えていることを初めて定量的に明らかにした。また,同時に画像データベースの詳細な解析を行った結果,琉球列島を取り巻く黒潮が温帯性魚類の分布を阻む障壁の役割を果たしていることが強く示唆された。 したがって,「黒潮は強大なベルトコンベヤー小であると同時に「巨大な障壁小の役割も果たしていると言える。本年度はデータベースの解析とともに,ハ科のボウズハやタイ科のクロダイ属,そしてハタ科のマハタ属の地域個体群を形態及びDNAの両面から解析し,各地域個体群が黒潮によって影響を受けていることを明らかにした。特にマハタ属のアカハタは沖縄の個体群が小笠原諸島や本州・四国・九州の個体群と遺伝子レベルでかなり異なり、色彩も異なることが明らかになった。
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