日本周辺及び台湾から採集された標本に基づいてハタ科、ハゼ科、タイ科等の系統解析を行うとともに黒潮流域の屋久島の魚類相の取りまとめを行った。ハタ科のアカハタについては、日本各地、台湾やマレーシアから採集された標本の個体群解析を行い、黒潮を境(屋久島周辺)として北部集団と南部集団に分かれることが判明した。タイ科についてはキチヌを中心として研究を進めた。その結果、南日本には台湾の個体群から派生した個体群が存在することが明らかとなった。ハゼ科についてはボウズハゼを対象として、黒潮による分散について研究を進めた。その結果、ボウズハゼは数ヶ月に及ぶ浮遊稚魚期を有し、黒潮によって長距離分散が可能であることが明らかとなった。 屋久島の魚類槽については、前年度に行った濃密な採集調査で得られた1000個体を超える浅海性魚類標本の同定を行い、日本初記録種を含む分類学的に貴重な魚類が多数発見された。採集された魚類は24目、112科、382属、951種に達し、従来報告されていた580種を大幅に上回る結果となった。
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