研究課題
本研究の目的は、研究代表者らが分離・特性解明に成功している各種のマダニ生物活性分子(TBM)に関する最新知見を活用し、またB.gibsoniのESTデータベースも併用することによって、ガメートからスポロゾイトに至るマダニ体内の全発育期(SS期)虫体について、各種TBMと反応・結合する原虫分子の探索・同定、特性解明を展開し、最終的にこれらの組換え体複数を用いて、マダニ媒介性原虫病に特有の経発育期・介卵伝播を多段的・多重的に阻止しうる、世界初の多価疾病媒介阻止ワクチン(multi-component transmission-blocking vaccine)の実現を図ることである。平成21年度に得られた研究成果の概要は、以下の通りである。(1) マダニの細胞内栄養代謝は、細胞内に寄生するBabesia原虫の発育と消長においても、極めて重要であると考えられることから、細胞内栄養代謝の基盤を占めるTOR kinaseを中心とするアミノ酸情報伝達カスケードについて、検討を加え、Babesia感染症の媒介阻止ワクチンとしての可能性を探究している。(2) その結果、インスリンレセプター、PDK、Akt、4E-BP、eIF-4eなどの重要分子をコードする遺伝子のクローニングに成功し、TOR kinase経路に関わるTBM分子群の探索・特性解明における大きな前進がみられた。(3) TOR情報伝達カスケードの支配を受けているオートファジーに関しても、これまで不明だったBeclin-1、すなわちATG6遺伝子のクローニングに成功し、細胞の栄養代謝経路とオートファジーのインターフェイスを解明することが可能になってきた。(4) これまで解明をはかってきたマダニのオートファジーに加えて、マダニ体内で様々な発育期に発育・分化するBabesia原虫においても、原虫自身のオートファジー分子(Atg-13)がクローニングされた。今後、関連Atg分子群の解析を進めて、原虫オートファジーの概要と、構成分子の特性と機能を明確にする予定である。
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