1.葉緑体型APX一過的抑制による酸化的シグナリングの初期イベントの解明 ストロマ型APX(sAPX)およびチラコイド型APX(tAPX)のT-DNA挿入ノックアウト変異株(KO-sAPXおよびKO-tAPX)の光酸化的ストレスに対する感受性を野生株(WT)と比較したところ、KO-sAPXはWTと比べ有意な違いは認められなかったが、KO-tAPXではWTに比べ感受性の上昇が認められた。そこで、tAPXの一過的抑制植物(tAPX XR)のtAPX抑制に必要十分なエストロゲン量および処理時間などについて検討した。その結果、300μMエストロゲン処理により、24時間後にはtAPXの転写レベルでの発現をほぼ完全に抑制できる事が明らかになった。このとき膜画分のAPX活性の顕著な低下を確認した。tAPXの発現抑制に伴う、抗酸化系の応答をRT-PCRにより解析を行ったところ、顕著な変動は認められ無かった。 2.HsfA2誘導に関わる上流因子の同定 HsfA2プロモーター5'側から徐々に欠失させた一連の5'欠失系列とルシフェラーゼ(Luc)遺伝子とを融合させたコンストラクトを形質転換したシロイヌナズナを作製し、強光に対するLuc活性の変動を解析したところ、334〜79bp上流のプロモーター領域にHsfA2発現の誘導に関与するシスエレメントが存在することが明らかとなった。また、高温ストレス、過酸化水素、プロテアソーム阻害剤およびHSP90阻害剤に対するHsfA2の応答をシロイヌナズナ培養細胞を用い、解析を行ったところ、いずれの処理によってもHsfA2の迅速な誘導(15分以内)が認められた。
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