1.葉緑体型APX一過的抑制による酸化的シグナリングの初期イベントの解明 エストロゲン処理(100μM、48時間)によりtAPX発現を一過的に抑制し、マイクロアレイ解析を行った。その結果、コントロール植物(GUS XR)と比較し、tAPX XRでは365個の遺伝子の発現が2倍以上に上昇し、409個の発現が1/2以下に抑制されていた。そこで、葉緑体由来の酸化的シグナリングの分子機構を明らかにすることを目的として、葉緑体AOSに応答する遺伝子群の破壊株から、パラコートによる光酸化的ストレスに対して感受性あるいは非感受性を示す変異株(それぞれpssおよびpsi)の選抜を試みた。その結果、独立した3つのpsi(psi1~3)株および1つのpss(pss1)株が得られた。 2.HsfA2誘導に関わる上流因子の同定 前年度までにHsfA2のストレス応答に関わるシスエレメントは熱ショックエレメント(HSE)が関与していることを明らかにしている。HSEを介した遺伝子発現制御にはクラスA HSFが関与しており、シロイヌナズナには15種類のクラスA HSFが存在する。本年度はクラスA HSFのT-DNA挿入遺伝子破壊シロイヌナズナを用いて、強光ストレス下におけるHsfA2の発現をリアルタイムPCRにより解析を行っている。また、HsfA2のストレス応答に関与する分子機構を明らかにする目的で、プロテアソームおよびHSP90阻害剤に対するHsfA2の応答を解析したところ、ポリユビキチン化タンパク質の蓄積がHsfA2の誘導を引き起こしていることが明らかになった。
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