研究概要 |
(1)背景:受容体や酵素などを介して細胞の機能を制御する細胞機能制御分子の探索が天然物を中心に世界中で活発に行われている。しかし、たとえ有望な活性を示す化合物が見いだされたとしても、微量成分であったり、類似した化合物の混合物であったりなどの理由から、天然からの化合物の獲得が極めて困難な場合がある。また、多くの場合、毒性や化学的不安定性などの理由から、それらの軽減やさらには作用増強のための構造改変が求められる。そのような場合、全合成研究をとおしての効率的合成法の確立が極めて重要となる。 (2)目的:本研究では、グルタミン酸受容体アゴニストやアンタゴニスト活性、PP2A阻害活性、および抗腫瘍活性等の特異的な細胞機能制御活性をもち医薬開発リードや生物学研究のツールとして有望視されながら天然から純粋な形での供給が困難な状況にあるダイシハーベインとカイトセファリン、ホスラクトマイシン類天然物、およびオキサゾロマイシン類天然物を研究対象として取り上げ、全合成研究をとおしてその量的供給を可能にする効率的合成法を確立することを目的としている。また、多様な誘導体を合成することによって、活性に関わる構造情報を引き出し、これら化合物が関わる受容体や酵素などを介した細胞機能の分子レベルでの解明に貢献することも目的としている。 (3)方法:それぞれの標的天然物について、高度な反応制御下に合成を行う。すなわち、ダイシハーベインに関しては、ピラン環部の官能基化、グルタミン酸単位をもつテトラヒドロフラン環の立体選択的構築を経て、全合成を達成する。カイトセファリンに関しては、右側ピロリジンコア部の立体制御合成法を開発し、アラニン側鎖の導入を経て、全合成を達成する。ホスラクトマイシン類天然物に関しては、不飽和ラクトン部の構築、C8とC9位水酸基ならびにC8位アミノエチル単位の導入、および(Z,Z)-4-シクロヘキサジエニル単位の構築を経て、全合成を達成する。オキサゾロマイシン類天然物の合成に関しては、高度置換ピロリジノンコア部を含む右セグメントの合成、オキサゾール部を含む左セグメントの合成を経て、全合成を達成する。
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