ポリアルギニンペプチドなどアルギニンに富む塩基性のペプチドの細胞内移行機序としてアクチンの重合化を伴う特殊なエンドサイトーシスの一種であるマクロピノサイトーシスの関与が指摘されてきた。細胞内移行を誘導する膜透過ペプチド受容体を探索するために、光反応性のジアジリン基を付加したビオチン化ポリアルギニンペプチドを合成し、細胞表面においてこのペプチドと光架橋される分子として、myosin-9が同定された。更に詳細な検討を進めた結果、Myosin-9と関連する細胞表面の受容体が、R12の細胞内移行に極めて重要な働きをしていることが分かった。また、この受容体とR12との相互作用によりアクチンの重合化が誘導されることが分かった。この受容体をノックダウンした細胞をR12で刺激し、phalloidin-TRITCを用いて重合化したアクチンをコントロール細胞と比較した結果、ノックダウン細胞では、R12の刺激によるアクチン重合化が阻害された。またGi Proteinの細胞内シグナルを阻害するPertussis Toxinで処理した細胞はR12の取り込み量が有意に低下した。これらのことからこの受容体は膜透過ペプチドR12の受容体として機能し、これらの結合が起点となりマクロピノサイトーシスが誘起されることで、R12は細胞内に効率的に移行している可能性が示された。また、ポリアルギニンペプチドの細胞内(サイトゾル)への移行には、ポリアルギニン配列に加え、疎水性のアミノ酸配列が加わることで、移行効率が有意に高まることを明らかとした。
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