既知のTRPチャネルの温度感受性をスクリーニングし、TRPM2が体温近傍の温度で活性化するCa^<2+>透過性の高い非選択性陽イオンであることを明らかにし、膵臓ラ氏島β細胞でのインスリン放出に関与することを見いだしてきた。膵臓でのTRPM2機能制御によるインスリン分泌調節を目指し、TRPM2のインスリン放出における役割を分子レベルで明らかにするとともに個体レベルでの関与も解明することを第一の目的とする。また、TRPM2は免疫細胞での発現が確認されている。そこで、体温変動、とりわけ発熱時の免疫機能活性化にTRPM2の機能増強が関わっているかどうかを明らかにすることを第二の目的とする。 (1)インスリン放出へのTRPM2の関与の検討 (1)膵臓組織切片での多重染色による、より詳細なTRPM2発現解析を行う。(2)TRPM2作用物質の網羅的スクリーニング。(3)野生型マウスおよびTRPM2欠損マウスの膵臓ラ氏島を用いて、糖依存性・温度依存性のインスリン放出量を検討する。(4)ブドウ糖のみならず、脂質やアルギニンなど多くのインスリン放出刺激が知られており、それらの刺激によるインスリン放出の温度依存性を検討する。(5)個体レベルにおける血糖調節能の検討を行う。 (2)免疫細胞の温度による活性化機構の解明 (1)免疫系培養細胞での温度刺激による細胞内Ca^<2+>濃度増加、膜電流応答を観察する。(2)野生型マウスの脾臓またはリンパ節から免疫細胞を調整し、磁気ビーズ法によってB細胞およびT細胞を単離し、その精度をフローサイトメータを使用して確認する。そして、温度刺激によって応答が得られるかどうかをCa^<2+>イメージング法、パッチクランプ法を用いて検討する。(3)種々のサイトカイン産生(ELISA法)、NFAT測定と免疫細胞の運動能の変化を検討する。熱刺激の効果と既知のリンパ球刺激物質の効果を比較検討する。さらに、TRPM2欠損マウスから得たリンパ球での効果を野生型マウスのリンパ球での効果と比較検討する。
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