研究概要 |
1.我々はリンパ管新生を評価するinvivoの系を確立した。まずヌードマウスの胃壁にスキルス胃がんOCUM-2MLN細胞を移植しリンパ節転移を調べたところ,OCUM-2MLN細胞は4週後にリンパ節転移を示した。さらにCyclooxygenase-2阻害剤であるエトドラクを投与したところ,リンパ節転移が有意に抑制できることが確認された。次にヌードマウスに癌性腹膜炎を惹起し,横隔膜でのリンパ管新生を測定する系を確立した。この場合もエトドラクはリンパ管新生を抑制した。最後にチオグリコレートにより慢性腹膜炎を惹起し,横隔膜リンパ管新生を測定したところ,やはりエトドラクによる効果が見られた。これらの系は今後,リンパ管新生を検討する上で有効な系となることが期待された。 2.転写因子Prox1はリンパ管新生のマスター因子として作用することが我々のこれまでの研究で明らかとなっている。我々はTGF-β阻害剤を投与すると転写因子Prox1や細胞表面タンパクLYVE1の発現が上昇することを明らかにしてきた。さらに我々はProx1に結合する転写因子をいくつか同定した。この中でもCOUP-TFIIは静脈の分化に重要な役割を果たす転写因子であるが,COUP-TFIIの発現をsiRNAにより低下させるとProxlによるVEGFR-3の発現誘導が亢進するなど,静脈-リンパ管内皮細胞分化に2つの転写因子が何らかの相互作用を果たしていることが明らかとなった。
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