研究概要 |
Girdinのファミリー蛋白でGipie(GRP78-interacting protein induced by ER stress)と名付けた蛋白の機能解析を行った。Gipieは1476アミノ酸からなる蛋白をコードし、C末端領域の配列がGirdinとは相同性がなく、ユニークな機能を有することが示唆された。その発現をRT-PCRあるいはウェスタンブロット法で検討した結果、主に血管内皮細胞とマクロファージに発現していることが判明し、細胞内ではERとゴルジ体に局在していた。質量分析法により結合蛋白を検索したところ、再現性良く検出できる蛋白として、ERに局在し、ERストレスを制御するGRP78を同定した。GRP78はGipieのC末端領域と結合した。そこでGipieの発現が種々のERストレス負荷により変化するかどうかを検討した結果、thapsigargin,tunicamycin,homocysteine添加などによるERストレス負荷により、Gipieの発現が蛋白レベルで有意に増強した。機能解析の結果、GipieはERストレスに関与するGRP78とIRE1の結合を安定化させることにより、IRE1によるJNK活性化やCHOPの発現を抑制し、ERストレスによる細胞死を抑制した。よって、GipieはERストレス反応の調節因子であり、細胞保護作用を有すると考えられた。さらにラット頸動脈の内皮をバルーンで損傷し、内膜肥厚を引きおこすと、同部位にGRP78とGipieの発現が増強し、血管内皮の物理的傷害に伴うストレスに応答し、発現誘導されることが明らかになった。
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