研究課題/領域番号 |
19209014
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
平山 壽哉 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (50050696)
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研究分担者 |
磯本 一 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (90322304)
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / VacA / 細菌毒素 / CagA / P38 MAP kinase / ATF-2経路 / PI3K / Akt経路 / GSK3β / 毒性発現 |
研究概要 |
VacAによって炎症反応に関わる誘導型シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現がAZ-521細胞で亢進した。また、炎症性サイトカインであるIL-8について調べた結果、末梢血CD14^+細胞のみならず、単球系U937細胞を含む数種の細胞でVacAによるIL-8の産生誘導を認めた。これらの現象はいずれもVacAによってp38MAPK/ATF-2経路が活性化されたことに起因することが昨年度までに判明した。そこで、TSS4およびトランスフェクッションによる細胞内へのCagAの導入が、VacAによるp38MAPKおよびErkの活性化にどのように影響するかを調べたが、いずれもその影響は否定的であった。一方、CagAの細胞内移行に伴い変化する転写活性化因子β-cateninについての報告が相次いでいる。β-cateninはカドヘリンと共に細胞接着因子として働く外に、細胞増殖に関わるタンパクの発現を誘導する発癌促進因子のひとつでもある。またβ-cateninは、Wnt経路およびPI3K/Akt経路の構成分子として、GSK3やAPCといった癌抑制因子と複合体を形成して細胞増殖などの調節に関わっている。そこで、VacAによるPI3K/Akt経路の活性化とその経路の下流にあるGSK3β/β-catenin複合体の形成に及ぼす影響を調べるとともに、VacA欠損株を用いた感染実験においても同様な影響を解析した。その結果、VacAはPI3K/Aktを活性化し、β-cateninの転写活性を誘導することが明らかになった。かかる事果は、VacAが胃粘膜細胞の増殖にも関わっていることを示唆していた(2009年3月発行のJ Biol Chem.に発表)。しかしこれらの現象は現在のところCagAとの関連が十分に究明できていない。
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