研究概要 |
自然免疫系の活性化にはToll様受容体に加え,細胞質に存在する受容体(cytosolic PRRs)の存在も明らかとなり,特に病原体由来のDNA認識の仕組みについては未だよく知られていない。本研究では我々が見いだしたDNA認識による免疫応答に関与すると思われる二つの遺伝子,DNA-dependent activator of IRFs(DAI)及びその関連分子について,DAI分子がいかにしてDNAを認識し免疫系を賦活化するか,そのメカニズムを明らかにすることを目的としている。平成19年度において,我々はZα,Zβドメインに加えて,新たなDNA結合ドメイン(D3)が必須であることを明らかにした。またDAIによるDNA刺激時のインターフェロン産生には,DAI分子のリン酸化が必要であることを明らかにした。このリン酸化はSer352,Ser353のセリン残基であると予想された。実際これら残基をアラニンに置換した変異体ではDAI過剰発現によるインターフェロン産生の増強効果が認められなかった。また,DAIはDNA刺激時に多量体を形成することが免疫沈降の実験から示唆され,人工的にDAIの二量体を形成させることで,DNA刺激非依存的にインターフェロンを誘導することを見出した。これらのことから,我々は以下のようなモデルを考えている。まず細胞内に取り込まれたDNAをDAIはZα,Zβ,D3ドメインを介して認識する。その後DAIはDNAを介して多量体を形成しIRF3やTBK1など,インターフェロン誘導に関与する因子をリクルートする。このモデルにおいて,DAIのリン酸化が多量体形成前,形成後どちらに起きているか,そのシーケンスは不明だが,DAIのリン酸化はIRF3,TBK1のリクルートに必要である。今後,リン酸化が実際どの残基で起きているのか,多量体形成との関係なども検討していく予定である。またZα,Zβドメインを有するADAR1ノックアウト細胞を用いた解析から,ADAR1はDNA刺激時のインターフェロン誘導を負に制御していることが明らかとなった。これらのことをまとめ,本年度論文として発表した(Wang et al)。
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