研究概要 |
(1) ミトコンドリアDNA維持機構の解析:ミトコンドリアRNAポリメラーゼが鋳型DNAが超らせん構造をとっているときには、プロモーター非依存性の強いRNA合成活性を示すことを見出した。ミトコンドリアDNAは大量のRNAを含んでいるが、その機構は30年以上にわたり現在でも不明で、その有力な合成機構であることを示唆している(Genes Cells, 09)。また、TFAM発現マウスが加齢に伴う記憶学習能力の低下を予防するなど、老化の進行を抑制することを示した(J Neurosci, 08)。さらにTFAM結合蛋白質として同定したERAL1がミトコンドリアリボソームのアセンブリに必要なことを同定した(Nucl Acids Res, in press)(2) ミトコンドリア検査診断システムの構築および患者検体の検査:通常検査によく用いられるリンパ球のトコンドリアDNAコピー数測定検査はばらつきが大きく、時系列の追跡を困難にしていた。そのばらつきの原因として、サンプルの血小板混入が大きな要因であることを見出し、その除去が正確で再現性のある測定のために必要であることを報告した(Ann Clin Biochem, 08)。また、ミトコンドリアゲノム病の主要な原因変異である大欠失の高感度検出系とその定量系を立ち上げ、検査を実施している。(3) 体細胞ミトコンドリアDNA解析:申請者が共同研究者として加わり、糖尿病とミトコンドリアゲノム配列との関係を調べる調査が組み込まれた久山町糖尿病データベースプロジェクトが、年齢、性別等をマッチングさせた3000人以上のゲノムサンプルの収集を終えた。ミトコンドリアDNAの転写・複製の制御部位であるD-loop領域の約1kbpと電子伝達系複合体Iサブユニット6のをコードする約1kbpをターゲットとして、上記3000人以上の全配列を決定した。現在この配列データを基に、疾患と連鎖する多型について検索中である。
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