研究概要 |
1. 小児の出生時体格、神経発達、アレルギーと環境化学物質の関連を検討するために、妊婦と小児を対象に前向きコホート研究を実施している。妊娠26〜35週の妊婦514名を対象に、出生前、1歳6ヶ月時、3歳6ヶ月時の食習慣・生活習慣・職業歴・住環境・育児環境等を詳細に調べた。 2. 今年度、母体血中ダイオキシン類濃度測定56検体を追加終了し、426名の測定が終了した。その結果、母体血中ダイオキシン類濃度とSmall for Gestational Ageとの関連では、総PCDDs(OR ; 1.39)、総PCDDs/PCDFs(OR ; 1.40)においてオッズ比の上昇が見られた。ダイオキシン類異性体レベルでも1, 2, 3, 6, 7, 8-HxCDF(OR ; 1.56)において有意なオッズ比上昇がみられた。 3. 生後6ヶ月時、1歳6ヶ月時におけるBSID-IIによる発達検査は全て終了し、現在3歳6ヶ月時におけるKaufman Assessment Battery for Children(KABC)を使った神経行動発達検査及びその母親に簡易版知能検査(WAIS-R)がほぼ終了した。今後、7歳において認知能検査(WIsc-III)、注意機能評価(CPT)、運動機能評価(重心動揺検査・運動遂行検査)および育児環境調査を行う予定である。 4. 環境化学物質と児の免疫・アレルギー疾患への影響を検討するため臍帯血IgEの測定のほか、 ATS-DLDおよびISSACの日本語版の調査票を用いて1歳6ヶ月時・3歳6ヶ月時に喘息・アトピー性皮膚炎の有病率を調査している。母体血中ダイオキシン濃度と臍帯血IgEはとの検討では男児でのみ関連を認めた。 5. 低用量曝露の妊婦を対象として母体血中ダイオキシン類濃度とその代謝に関与する遺伝子多型が出生時体重におよぼす影響を検討したところ、喫煙妊婦のダイオキシン類濃度がHigh群でCYP1B1遺伝子(C>G, Leu 432 Val)がCG/GG型では、ダイオキシン類濃度がLow群でCYP1B1遺伝子がCC型に比べて、出生時体重が減少する傾向が認められた。非喫煙妊婦ではこのような関連がみられなかったことから,喫煙妊婦における出生体重の低下には母体血中ダイオキシン類濃度とCYP1B1遺伝子多型が関与している可能性が示唆された。
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