研究課題/領域番号 |
19209033
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
祖父江 元 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20148315)
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研究分担者 |
田中 章景 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (30378012)
足立 弘明 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, COE特任講師 (40432257)
勝野 雅央 名古屋大学, 高等研究院, 特任講師 (50402566)
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キーワード | 球脊髄性筋萎縮症 / アンドロゲン受容体 / リュープロレリン / ポリグルタミン / CAGリピート |
研究概要 |
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)はハンチントン病や脊髄小脳失調症などと並ぶポリグルタミン病の一つで、アンドロゲン受容体(AR)のCAGリピートの異常延長を原因とする遺伝性運動ニューロン疾患である。根本的治療は存在せず、緩徐進行性の経過をたどり、球麻痺に起因する呼吸器感染が死因となることが多い。これまで我々は、テストステロン依存性に変異アンドロゲン受容体が核内集積することが、本疾患における神経変性の病態の根幹であることを明らかにし、SBMAのモデルマウスにLHRHアナログ(リュープロレリン酢酸塩)を投与すると、テストステロンの分泌が抑制されるとともに神経症状と病理所見が著しく改善することを明らかにしてきた。本研究では、50例のSBMA患者を対象としたリュープロレリン酢酸塩のプラセボ対照比較試験(第II相臨床試験)を行い、本剤の有効性と安全性を検討した。48週間のプラセボ対照比較試験では、リュープロレリン酢酸塩は血清テストステロンを投与後4週間以内に去勢レベルまで低下させ、血清CKや陰嚢皮膚における1C2(抗ポリグルタミン抗体)陽性細胞数を有意に減少させた。また、リュープロレリン投与群では、嚥下造影における食道入口部開大時間の有意な改善が認められた。その後のオープンラベルによる継続試験では、リュープロレリン酢酸塩の長期投与(144週)により運動機能スコア(ALSFRS-R)の悪化が有意に抑制されることが明らかとなった。有害事象は前立腺癌患者に対する臨床試験の成績と比べ明らかな差は乏しかった。さらに、リュープロレリン酢酸塩を2年間投与されて不整脈で死亡した被験者の剖検組織を用いた病理学的解析では、リュープロレリン酢酸塩により脊髄運動ニューロンにおける変異ARの核内集積が抑制されることが示唆された。以上より、本剤はSBMAの治療薬として有望であると考えられた。
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