研究課題
現代の飽食・肥満・運動不足は膵β細胞にインスリン分泌の増加を強要する。これは膵β細胞に小胞体ストレスによるアポトーシスをもたらすことから、2型糖尿病の発症機序として、小胞体ストレスによる膵β細胞の減少が注目される。本研究では、小胞体ストレス下にあるWFS1欠損マウスの膵β細胞では、翻訳抑制因子4E-BP1の発現が著増しており、慢性小胞体ストレス下で誘導される転写因子ATF4の制御下にあることを明らかにした。4E-BP1がないと膵β細胞は小胞体ストレス下での生存能が低下する。WFS1欠損マウスあるいはAkitaマウスでさらに4E-BP1を欠損させると、β細胞の減少がさらに促進され血糖も悪化しことより、4E-BP1は、慢性の小胞体ストレス下で発現が誘導され膵β細胞を保護していることを世界で初めて見出した(Yamaguchi S et.al. Cell Metabolism 2008)。また臓器間代謝情報ネットワークにより膵β細胞を増殖させるという斬新な糖尿病治療法を見出した。マウス肝臓のERK(extracellular signal regulated kinase)経路を刺激すると、自律神経を使って、肝臓-脳-膵ラ氏島と代謝情報をリレーして膵β細胞が増殖した。そこで、膵β細胞が減少したために高血糖になったマウスの肝臓でERK経路を刺激すると、このネットワークを使って膵β細胞が増殖して高血糖を著明に改善した。これは体に内在する恒常性維持機構のひとつと考えられ、糖尿病治療だけではなく、従来とはまったく異なった斬新な再生治療への道を拓くものとして世界で注目されている(Imai J et.al. Science 2008)。
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